“熔ける” 井川意高著 幻冬舎文庫 を読んだ。
この本は大王製紙前会長が会社の金108億円をカジノですったノンフィクション。
本人が書いているからそのリアリティーがすごかった。
まず、井川氏の知的さ、人間としての魅力に惹かれた。桁違いのスケールで展開していく。世の中の裏の世界を垣間見ることができ、彼の壮絶な人生の一部を追体験できた。響いた内容を列挙。
・”「コストを徹底的に削減し、営業部員との意思疎通を密にします」という会議での社員の発言にはすかさず具体性を問うようにしていた。「どこのコストをいつまでにいくら削減するの?」”
“私はいつも5W2Hを心がけていた。when,where,who,what,why,howに加え、how many またはhow much つまり具体的な数値だ。”
・”銀行は晴れの日は親切に傘を貸してくれる。でも雨の日になると傘を取り上げてしまう”
・”負けが込んで最後の捨て鉢勝負をかけたとき、マジックモーメントがやってきた。300万円が、600万円に、600万円が1200万円に、そして7億円まで。”以上抜粋し引用
具体的な目標を決めて、議論し、具体的な行動を策定する。当たり前だがそれができていないことが多い。
銀行の傘の話は他でも聞いたことがあるが、実際その現場を経験した著者の記述は生々しかった。赤字会社の名古屋パルプの社長時代、著者は都市銀行に出向いたが、その支店長は立ち上がりもせず、ろくに返事もしてくれなかったそうだ。世の中は厳しい社会だ。
マジックモーメントについて、これはツキが回ってくるとひたすら勝ち続けることができる、そんな時間があるという話。
彼の話は新聞やテレビで昔耳にしたことがあるが、当時一貫して彼の人格を責める偏向報道だった。ギャンブル依存症に対する対策、企業統治のあり方、監査のあり方、中立的な報道、刑務所での人権問題など様々な問題を提起する本だった。彼のような有能な人は今後も再起して世のために活躍してほしいと思った。
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