先日ブログでいい写真について書いた。
絵画も同様。
主題があり、ずっと見続け、考えさせられるような絵画は傑作だ。
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さて、広重が最晩年に描いた大作、名所江戸百景が私は好きだ。
"浅草田圃酉の町詣"が特に惹かれる。
この絵をみて、何を感じるだろうか。
猫が外を見ている。っていうだけの絵だろうか。
絵をクリックしてじっくり鑑賞してみてほしい。
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まず、絵の中心である、猫に視点が集まる。
その後、その猫が見ている視線に沿って右へと導線が向かう。
すると大きな熊手を持った人々が行列を作っている。
酉の市の賑わいだ。
猫はその楽しげな町の様子を眺めているのだ。
視点を猫に戻す。猫の前には象徴的な格子窓。
猫の周りを見渡す。
見なれない、吉原雀の模様に、熊手のかんざし。
これは遊郭の暗喩だ。
もう一度猫に視線を戻す。
艷やかな白い猫。つまり、猫は遊女自身なのだ。
視線を上方奥へ移す。
地平線に淡い朱色。日没後の夕暮れだ。
雁行が山の方へ飛んでいる。
鳥たちは自由に温かい家族がいる巣へ帰っていける。
最後に視線を最上方へ。
遊女自身の未来を表すかのように、濃紺の闇夜が帳を下ろそうとしている、、、。
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吉原の悲しさ、ひいては社会の不条理をテーマとし、絵の中で導線が回遊する広重の傑作作品だ。
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