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名所江戸百景

  • 2023.06.02

    先日ブログでいい写真について書いた。

    絵画も同様。

    主題があり、ずっと見続け、考えさせられるような絵画は傑作だ。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    さて、広重が最晩年に描いた大作、名所江戸百景が私は好きだ。

    "浅草田圃酉の町詣"が特に惹かれる。

    浅草田んぼ.jpg

    この絵をみて、何を感じるだろうか。

    猫が外を見ている。っていうだけの絵だろうか。

    絵をクリックしてじっくり鑑賞してみてほしい。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    まず、絵の中心である、猫に視点が集まる。

    その後、その猫が見ている視線に沿って右へと導線が向かう。

    すると大きな熊手を持った人々が行列を作っている。

    酉の市の賑わいだ。

    猫はその楽しげな町の様子を眺めているのだ。

    視点を猫に戻す。猫の前には象徴的な格子窓。

    猫の周りを見渡す。

    見なれない、吉原雀の模様に、熊手のかんざし。

    これは遊郭の暗喩だ。

    もう一度猫に視線を戻す。

    艷やかな白い猫。つまり、猫は遊女自身なのだ。

    視線を上方奥へ移す。

    地平線に淡い朱色。日没後の夕暮れだ。

    雁行が山の方へ飛んでいる。

    鳥たちは自由に温かい家族がいる巣へ帰っていける。

    最後に視線を最上方へ。

    遊女自身の未来を表すかのように、濃紺の闇夜が帳を下ろそうとしている、、、。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    吉原の悲しさ、ひいては社会の不条理をテーマとし、絵の中で導線が回遊する広重の傑作作品だ。

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