"蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ他17編" 芥川龍之介作 岩波文庫 を読んだ。
岩波文庫に私が読んだことがない芥川龍之介の短編がいくつか収録されていた。
中でも「桃太郎」が面白かった。
これは芥川龍之介が童話の桃太郎を大幅に脚色、加筆して大人向けに仕上げたもの。
鬼が平和に暮らしていたのに、突如桃太郎という暴漢に襲われるという設定。
表現が面白すぎるので、一部抜粋。
「鬼は熱帯的風景の中に、琴を弾いたり、踊りを踊ったり、古代の詩人の詩を歌ったり、すこぶる安穏に暮らしていた。〜〜〜殊にもう髪の白い、牙の抜けた鬼の母はいつも孫のお守りをしながら、我々人間の恐ろしさを話して聞かせなどしたものである。〜〜〜人間の女と来た日には、その生白い顔や手足へ一面に鉛の粉をなすっているのだよ。それだけならまだ好いのだがね。男でも女でも同じように、嘘はいうし、慾は深いし、焼餅は焼くし、己惚れは強いし、仲間同士殺し合うし、火はつけるし、泥棒はするし、手のつけようのない毛だものなのだよ、、、。」
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味気ない童話をこれほどまでに味わい深く仕立てる芥川龍之介。
物事を一義的に考えてはいけないという警句を与える、魅力的な短編集。
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